社会問題の一端を知る。学生と本をつくりました。店頭配布中です

リンデにおこしくださりありがとうございます。
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新年も早々から馴染みのお客様はじめ、遠方各地から品を求めにお見えになる姿に接し、
今年もオリジナルの製作やバイイング、あるいは依頼のある編集や執筆など、
あらゆるものに精を尽くしていこうと期するしだいです。よろしくお願いします。

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ベルギー le typographe(ル タイポグラフ) 印刷のレターアイテムが店頭にすべて到着しました。
昨年の渡航から数カ月。現地の印刷工場(こうば)で直に見たものが、日本の、福岡の、大手門の
狭小ビルの一角にそしらぬ顔でひしめく光景。感慨?もそこそこに、それらをどうやって楽しんでもらおうか。
弾む気持ちを制しながら、空間、言葉を思案中です。

IMG_5355話題変わって、本「Ensemble/アンサンブル」の紹介。

これは先月(12/24)刷り上がったばかりの本で、講師として私が10年以上もお世話になる
ファッション専門学校の学生とともにつくりあげた一冊です。
毎年、私の授業は一年をかけて雑誌制作に取り組むのですが、そのテーマ設定は、
学生の意思を最大限に反映したいという思いから、いつもゼロベースからスタートします。

意欲的な学生もいれば、そうでない(にも関わらず授業を選んでくれている……)学生と
まっさらな状態でアイディアを出し合う時間は、私の恒例の楽しみで、
ある年はコーディネート(スタイリング)集をつくったり、明くる年は衣食住でテーマを切ったりと、
当代の学生カラー(というのが本当にあるんです)で企画内容は大きく変わります。
つまりこの本(Ensemble/アンサンブル)も、今年の学生カラーが表れた一冊、というわけ。
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ところで、
思い返せば昨年だけでも、記憶に留めておくべきニュースがたくさんありました。
にわかに盛り上がり、なぜか報道の表舞台から消え失せた魚市場移転問題、
北部九州の大水害、福祉施設での凄惨な殺人事件、揚げ足取りに終始する国内政治、朝鮮半島の緊張、
国連では核兵器禁止条約が採択(日本は不参加)され、アメリカは大統領も変わりました。

大なり小なりというか、気に留めておくべき対象に大も小もありはしないのですが、
自分たちの日常生活の目の前に横たわる、身近な問題くらいは、そろそろ意識したい。
なんかこう、自分たちが好きなファッションを通じて、そういう問題の現状とか展望とかを
まとめてもいいな ! 「Ensemble/アンサンブル」は、そうした学生(11人)の声によって始動しました。

彼らが向き合った社会問題は全部で「11」。

学生Kさんの「コミュニケーション障害」記事を皮切りに、「核戦争」、「フェアトレード」、「水質汚濁」、
「児童虐待」、「動物愛護」、「メディア・リテラシー」、「宗教紛争」、「テロ」、「LGBT」、
それに「フェミニズム」をテーマに、各分野の第一線で活躍されるかたがたに取材を依頼しました。

SNSはあくまでもツール。縛られるのではなく、使いこなすことが肝心なのだ。情報伝達の手段がますます手軽さを増す一方、その“主役”であるはずの私たちは、どれほど「自分の範疇」で各ツールを駆使できているだろうか。
P04 「“ネット”に縛られる若者」 より (研究テーマ_コミュニケーション障害/執筆学生:K)

(長崎大学核兵器廃絶研究センター・客員研究員 桐谷多恵子さんが、広島・平和記念公園の話題にふれ)「広島の復興は、世界へアピールするための被爆都市としての『復興』でした。しかし、生活者のための復興とは言えません。我々はその“公園”を、原爆を忘れないための場所であり、もう二度と戦争に使われないよう決意する場ということを改めて胸に刻まなければなりません」。
P06 「同時代を生きる、被爆者と私たち」 より (研究テーマ_核戦争/執筆学生:Y)

有名無名問わず、情報発信には責任がともなう。新聞記者である川上さんが、日ごろいかに真実を伝えるために、足を動かし、様ざまな立場の人に会っているか。つまり、誰によってその記事(情報)が提供されているかを、私たちは判別すべきだ。
P16 「情報を正しく選別すべき時代」 より (研究テーマ_メディア・リテラシー/執筆学生:T)

学生として、若者として、女として、男として、
それぞれの立場からわき上がる感情を抑えつつ、客観的に物事をとらえる難しさ。
まして、長文など、普段まったく書く機会のない(おっさんでも滅多にない)学生には、
この授業は身にこたえる挑戦だったはずです。
ただそれ以上に、この取組み(授業)は、問題を問題として理解することや
問題の改善にあたる人が自分たちの身の回りに確かに存在していることを学ぶ絶好のチャンスでした。

私たちを取り巻く社会・自然環境、ひいては世界情勢は、日々めまぐるしく移り変わっている。
それにともない社会では今、自分たちの想像をはるかに超える新しい価値観が生まれている一方で、
様ざまな課題が立ちはだかっている。本誌「アンサンブル」は、ファッション誌でありながら、
現代を生きる読者の代表として、学生の私たちが今、避けては通れぬ11の社会テーマを考える。
小誌をきっかけに、これから向かうべき人間の未来を共に模索してみよう。

P02 プロローグより

学生が大仰なことを言いおって! という気持ちもわかりますが、
もうずいぶんと社会を経験してしまっている人にこそ、
目にしてもらいたい現実があります。出会える言葉があります。

本「Ensemble/アンサンブル」は、リンデ店頭でも無料配布しています。

どうぞ手に取ってご一読ください。

最後に、本誌制作にあたり取材のご協力をいただいたかたがたは下記のとおりです。
昨年はお忙しいなか、学生のために時間を割いてくださり、本当にありがとうございました。

(ページ順に)
株式会社 電通 若者研究部 奈木れい さま
長崎大学核兵器廃絶研究センター・客員研究員 桐谷多恵子 さま
●切明千枝子 さま
長崎原爆資料館 さま
ポップコーヒーズ 宮房武亮 さま
福岡県環境部環境保全課水質係 さま
福岡市こども総合センター 久保健二 さま
環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 さま
毎日新聞福岡報道部 川上珠実 さま
福岡マスジドアンヌールイスラム文化センター さま
福岡市役所市民局・防災危機管理部・防災危機管理課 松浦裕樹 さま、西川秀一郎 さま
LGBT-JAPAN 田附亮 さま
●東京大学名誉教授 上野千鶴子 さま
※所属・役職表記等は2017年12月時点のものです